知名度だけが高く魂の感じられないブランドジュエリー、どこかで見たようなデザイン、本当の価値が伝わってこない高価な装飾品。そんなジュエリーばかりで辟易していませんか?
真のラグジュアリーとは何か、それは単なる高価格や有名ブランド名ではなく、その背後にある物語、職人技、そして文化的深みにこそあるのです。地中海に浮かぶ小さな島イタリア・カプリ島発祥の「シャンテクレール」は、そんな本質的な価値を体現するラグジュアリージュエリーブランドです。
カンパネッレ(ベル)、ガッロ(雄鶏)、ファラリオーニなど、カプリ島の象徴的モチーフをモダンかつ洗練された形で表現するシャンテクレールのジュエリーは、単なる装飾品ではなく、カプリ島の魂を身につける芸術品なのです。この記事では、シャンテクレールの歴史、デザインの源泉、代表的なコレクション、そして賢い選び方まで、真のイタリアンラグジュアリーの世界をご案内します。
シャンテクレールの歴史:カプリ島での誕生と成長
カプリ島の魔法のような美しさから生まれたシャンテクレールは、単なるジュエリーブランドではなく、イタリアのドルチェ・ヴィータを体現する芸術作品としての地位を確立してきました。
1940年代カプリ島での輝かしい誕生
1944年、地中海に浮かぶ宝石のような島、カプリ島。紺碧の海と白亜の断崖が織りなす絶景の中で、二人の情熱的なジュエラーによってシャンテクレールは誕生しました。創設者のピエトロ・カプアーノとサルヴァトーレ・アプレアはカプリ島の自然美と伝統工芸を融合させ、唯一無二のジュエリーブランドを作り上げたのです。
多くの人はラグジュアリージュエリーは常に大都市で生まれると思いがちですが、シャンテクレールはむしろ地方の美しい風景から生まれた独自性こそが真の魅力なのです。
戦後のイタリアが徐々に活気を取り戻していた時代、カプリ島はヨーロッパの上流階級や芸術家たちの楽園として再び脚光を浴び始めていました。この島の小さなアトリエから、伝統的な技術と革新的なデザインを融合させた作品が生み出され、瞬く間に注目を集めるようになります。
小さな島の工房から世界的なブランドへと成長していく姿は、まさにイタリアンドリームの象徴といえるでしょう。
ジャクリーン・ケネディら時代を彩ったセレブリティとの関係
1950年代から60年代にかけて、カプリ島は国際的なセレブリティたちの憧れの地となりました。
なかでも、ジャクリーン・ケネディ・オナシスのシャンテクレールへの愛着は特筆すべきものでした。彼女は島を訪れる度にブティックに立ち寄り、特にカンパネッレ(ベル)のチャームを愛用したことで知られています。
同様に、オードリー・ヘプバーンもシャンテクレールのジュエリーを身に着け、その洗練された美しさをスクリーンの内外で輝かせました。彼女のエレガントで気品あるスタイルは、ブランドの美学と完璧に調和していたのです。
こうした著名人たちの支持は単なる偶然ではありません。彼らはブランドが体現する「本物の贅沢」—つまり派手な誇示ではなく、細部への繊細な配慮、職人技、そして文化的深みを持つ美しさ—に共感したのです。
現代のセレブリティ文化が表面的な華やかさに偏りがちな中、シャンテクレールが大切にしてきたのは、このような真の価値を理解できる人々との深い繋がりなのです。
ドルチェ・ヴィータの精神を体現するブランドへ
1950年代から60年代のイタリアを彩った「ドルチェ・ヴィータ(甘い生活)」。この時代精神はシャンテクレールの創造的アイデンティティの中核となりました。
フェリーニ監督の映画『甘い生活』に描かれた時代のように、洗練された優雅さと自由な創造性が溢れる雰囲気がジュエリーデザインにも反映されているのです。
戦後のイタリアが経済的・文化的に花開いた時代、シャンテクレールはカプリ島を訪れる国際的なエリートたちの間で「知る人ぞ知る」宝石として評判を広げていきました。島の小さなブティックは、本物の芸術と職人技を求める人々の秘密の目的地となったのです。
急激に成長したいくつかのラグジュアリーブランドが、本来の魂を失ってしまう様を見て悲しんだ記憶をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、シャンテクレールは家族経営の精神を守りながら発展してきました。
現在も創設家族の血を引くアプレア家が経営に関わり、カプリ島の魂とドルチェ・ヴィータの精神を守り続けています。彼らにとって、ブランドの拡大は目的ではなく、島の美しさと職人技を世界と共有するための手段なのです。
デザインのインスピレーション:カプリ島の自然と文化
シャンテクレールのジュエリーは、カプリ島の息を呑むような自然美と豊かな文化的遺産から直接インスピレーションを得た芸術作品です。その一つ一つには、島の物語が宝石と貴金属によって表現されています。
カプリ島の紺碧の海と雄大な自然をジュエリーに
カプリ島を訪れたことのある方なら、その圧倒的な美しさに心を奪われた経験があるでしょう。紺碧の地中海、白亜の断崖、そして色とりどりの花々が織りなす風景は、まるで夢の中の光景のようです。
シャンテクレールは、この自然の芸術をジュエリーという形で捉えることに成功しました。
ブランドのデザイナーたちは、島の色彩をジュエリーに反映させるためにサファイア、アクアマリン、ターコイズなどの青い宝石を多用します。これらは島を囲む地中海の様々な青の色調を表現しているのです。
また、白いダイヤモンドや真珠は、太陽の下で輝く石灰岩の断崖を思わせます。
しかし単に色彩を模倣するだけではなく、シャンテクレールは自然の持つ動きと生命力をデザインに取り入れることにこだわっています。たとえば、エナメル技法を駆使した海の波模様や宝石をセットする角度にまでこだわり、カプリ島の光の反射や屈折を再現しようとしています。
多くのジュエリーブランドが図面から始まるデザインを行うのに対し、シャンテクレールのデザイナーたちは実際に島の自然の中に身を置き、その体験から直接インスピレーションを得るというアプローチを取っているのです。
Logoコレクション:幸運のガッロ(雄鶏)とファラリオーニの造形美
シャンテクレールの象徴的なコレクションの一つが「Logo」コレクションです。このコレクションは、ブランドのシンボルである「ガッロ(雄鶏)」と、カプリ島のシンボル「ラ ピアッツェッタ(時計塔)」、「ファライオー二の岩」等という象徴的なモチーフを中心に展開されています。
シャンテクレールのガッロは、単なる図案化された鳥ではなく、18Kゴールドやプラチナで精巧に作られ、時にはダイヤモンドやカラーストーンが散りばめられた芸術品です。職人たちは羽一枚一枚のディテールにこだわり、生命感あふれる表現を追求しています。
一方、ファラリオーニは島の沖合いに立つ三つの岩柱で、カプリ島を訪れる観光客が必ず写真に収める絶景です。このファラリオーニの三つの岩の配置と造形美を、ジュエリーのデザインに昇華させたのがLogoコレクションのもう一つの特徴です。
三つの異なる大きさの宝石を配置することで、ファラリオーニの壮大さと神秘性を表現しています。
「ラグジュアリージュエリーは抽象的なデザインが主流だ」という一般的な見方とは異なり、シャンテクレールは具体的な島の象徴をモチーフにすることで装着する人に物語と文化的つながりを提供しています。
Paillettes(パイエット)コレクション:きらめく1950年代「ドルチェ・ヴィータ」へのオマージュ
Paillettes(パイエット)コレクションは、1950年代から60年代のドルチェ・ヴィータ全盛期のカプリ島で開かれた華やかなパーティーとその時代の活気に敬意を表したコレクションです。「パイエット」とはフランス語でスパンコールを意味し、その名の通り、キラキラと輝く円形のゴールドやプラチナのディスクを重ねたデザインが特徴です。
このコレクションは、当時カプリ島を訪れたジャクリーン・ケネディやオードリー・ヘプバーンなど、国際的なセレブリティたちが身に着けていたファッションからインスピレーションを得ています。特に、夏の夜に開かれた屋外パーティーで、星空の下でスパンコールのドレスが風に揺られて輝く様子を宝石で表現しようとしたものです。
職人たちは、一枚一枚のディスクの大きさや厚みを微妙に変えることで、動きに合わせて光の反射が変化する効果を生み出しています。また、一見シンプルな円形のディスクですが、その表面には繊細なハンマー仕上げが施されており、太陽や月の光を様々な角度で反射するよう計算されているのです。
Paillettesコレクションは過去の美学を現代的に解釈し、現代女性のライフスタイルに合わせたデザインとなっています。昼はカジュアルに、夜はフォーマルに、様々なシーンで活躍するのがこのコレクションの魅力です。
ドルチェ・ヴィータの時代を知らない若い世代にも、その時代の自由と創造性の精神を伝えるジュエリーとなっています。
代表的コレクション:カンパネッレの物語

ピエトロ・カプアーノ(真ん中左)と当時のアメリカ大統領ルーズベルト(真ん中右)
シャンテクレールの象徴として世界中のコレクターを魅了し続けるカンパネッレ(ベル)は、単なるジュエリーを超えた文化的アイコンです。小さなベルの中に込められた深い物語と職人技を紐解いていきましょう。
カンパネッレ:幸運を呼び込む、カプリ島の魔法のベル
カンパネッレ(イタリア語で「小さなベル」の意)は、シャンテクレールの最も象徴的なコレクションです。このベル型のチャームはただの装飾品ではなく、カプリ島の伝統と深く結びついた「幸運の象徴」として生まれました。島の伝説では、このベルの音色が幸運を呼び寄せ、願いを叶えると信じられているのです。
カンパネッレの特徴は、その美しさだけでなく、実際に音が鳴ることにあります。各ベルには小さなクラッパー(打撃部)が内蔵されており、動くたびに繊細で心地よい音を奏でます。
この音はカプリ島の教会の鐘の音をモチーフにしていると言われています。ジュエリーに「音」という要素を取り入れる発想は、当時画期的でした。
職人たちはカンパネッレの制作に特別な注意を払います。18Kゴールドやプラチナで作られるベルの肉厚は、美しい音色を生み出すために計算されています。
また、表面には様々な装飾が施され、エナメル技法やダイヤモンド、カラーストーンをあしらったデザインも多く展開されています。カンパネッレを身に着けることは、カプリ島の魔法の一部を常に携帯することを意味します。
聖ミカエルの伝説と、最初のベルの物語
カンパネッレコレクションの起源は、カプリ島に深く根付いた聖ミカエル(サン・ミケーレ)の伝説にまで遡ります。伝説によれば、8世紀頃、聖ミカエルが島に現れ、鐘の音で島民たちを危険から救ったとされています。それ以来、鐘の音はカプリ島で特別な意味を持つようになりました。
シャンテクレールの創設者たちは、この伝説にインスピレーションを得て、1950年代初頭に最初のカンパネッレを制作しました。最初のデザインは比較的シンプルなものでしたが、そこには既に「幸運をもたらす」という意味が込められていました。
興味深いことに、このジュエリーは当初、女性だけでなく男性にも好まれていました。カプリ島の漁師たちが、航海の安全を祈願してベルを身に着けていたという話も残っています。
時を経るにつれ、カンパネッレのデザインは進化していきましたが、その核心にある「守護と幸運」のテーマは変わりませんでした。装着する人は、カプリ島の長い歴史と伝統の一部となるのです。
ルーズベルト大統領へ贈られた特別な平和への願いをベルに
シャンテクレールの歴史の中で特筆すべきエピソードの一つが、第二次世界大戦終結後、フランクリン・ルーズベルト大統領に贈られた特別なカンパネッレの物語です。イタリアを含む世界が戦争の傷から立ち直ろうとしていた時期、カプリ島の人々は平和への深い願いを込めて、特別に設計されたゴールドのベルを贈呈することを決めました。
この特別なカンパネッレは、通常のものよりも大きく、外側には平和の象徴であるオリーブの枝のモチーフがエングレービングされていました。また、内側には「平和の音色が永遠に響きますように」というメッセージが刻まれていたといいます。
当時まだ若かったシャンテクレールの職人たちが何週間もかけて手作業で仕上げたこの作品は、芸術性と精神性が融合した傑作でした。
カンパネッレコレクションから生まれたEt voilàの世界
カンパネッレの人気に続き、シャンテクレールは様々な魅力的な派生コレクションを世に送り出してきました。その中でも特に注目すべきは「Et voilà(エ・ヴォワラ)カンパネッレ」でしょう。
Et voilàコレクションは、フランス語で「はい、どうぞ」という意味を持ち、ジュエリーを贈る喜びをテーマにしています。リボンをモチーフにしたこのコレクションは、18Kゴールドの繊細な「結び目」が特徴です。
一見シンプルなリボンのデザインですが、その製作には最高の技術が要求されます。金属に柔らかい布のような質感を与えるために、職人たちは特殊なハンマリング技術と磨き技術を駆使しているのです。
また、リボンの結び目の部分には小さなダイヤモンドがあしらわれ、贈り物を開ける時の喜びと期待を表現しています。
シャンテクレールジュエリーの購入ガイド
シャンテクレールのジュエリーは単なる装飾品ではなく、カプリ島の歴史と文化が宿る芸術品です。そんな特別なジュエリーとの出会いをより豊かなものにするために、選び方から購入方法まで詳しくご紹介します。
あなたのスタイルを輝かせるジュエリーの見つけ方
シャンテクレールのジュエリーを選ぶ際に最も大切なのは、ブランドの物語に共感し、自分自身の個性と調和するピースを見つけることです。
まずは、各コレクションの背景にある物語を理解することから始めましょう。
素材とカラーも重要な選択ポイントです。シャンテクレールは18Kゴールド(イエロー、ホワイト、ローズ)とプラチナを主に使用しています。自分の肌色や普段身につけるジュエリーとの相性を考慮して選ぶとよいでしょう。
また、カプリ島の海を象徴するブルーサファイアやアクアマリン、島の花々を表現した様々なカラーストーンなど、色彩豊かな宝石が使われているのもシャンテクレールの特徴です。自分の好きな色や意味のある色を選ぶことで、より個人的なつながりを感じられるジュエリーになります。
毎日身につけられるデザインと、特別な機会のための華やかなピースを組み合わせることで、あらゆる場面でシャンテクレールの世界観を楽しむことができます。
例えば、小さなカンパネッレのペンダントは日常使いに、大ぶりのPaillettes(パイエット)コレクションのイヤリングは特別なディナーの席にというように、シーンに合わせた選択をすることでジュエリーの持つ物語をより豊かに体験できるのです。
偽物リスクを回避:信頼できる購入先の見分け方
世界的に評価の高いシャンテクレールですが、残念ながら模倣品も存在します。本物のクラフトマンシップと歴史を持つシャンテクレールジュエリーを確実に手に入れるためには、正規取扱店での購入が絶対条件です。
最もおすすめ、かつ確実なのは、カプリ島のピアッツェッタ近くにある本店での購入です。ここでは創業家の一員がしばしば店頭に立ち、各ジュエリーの背景にある物語や制作過程について直接説明してくれることもあります。
本店ならではの特別なカスタマイズサービスや限定コレクションの先行販売なども行われています。
と言っても、カプリ島への旅行が難しい方も多い(というかほとんど?)でしょう。その場合は、国内の正規取扱店(弊店も含みます)やオンライン公式ストアを利用することができます。
正規取扱店では、必ず正規のシャンテクレールのボックスと保証書が付属します。保証書には固有のシリアルナンバーが記載されており、これが真正性の証明となります。
「インターネットの普及で高級品の購入が簡単になった」と言われますが、本物のラグジュアリーの価値は、その購入体験にも宿っています。オンラインストアは便利ですが、可能であれば実店舗を訪れることをお勧めします。
ジュエリーの輝き、重量感、そして細部の美しさは、実際に手に取ることでしか完全に理解できないからです。
カプリ島の本店を訪ねて
シャンテクレールジュエリーを購入する最も特別な方法は、やはりブランドの生まれ故郷であるカプリ島を訪れることでしょう。島の中心部にあるピアッツェッタ(小さな広場)から数歩のところにあるシャンテクレールのフラッグシップストアは単なるショップではなく、ブランドの歴史と精神を体験できる特別な場所です。
店内に一歩足を踏み入れると、まるで美術館のような空間が広がります。歴史的なアーカイブピースの展示、カプリ島の風景写真、そして職人たちの制作風景を映した映像などが、ジュエリーとともに展示されています。
これらはすべて、シャンテクレールがただのファッションアイテムではなく、カプリ島の文化と芸術の表現であることを物語っています。
ショッピングアドバイザーは単なる販売員ではなく、ブランドの歴史と各ジュエリーの物語に精通したエキスパートです。彼らは顧客一人ひとりの好みや価値観を丁寧に聞き取り、最も相応しいジュエリーを提案してくれます。
季節によっては、デザイナーや職人によるデモンストレーションやワークショップが開催されることもあります。
まとめ
イタリア・カプリ島の魅惑的な風景と豊かな文化から生まれたシャンテクレールは、単なるジュエリーブランドを超えた存在です。1950年代のドルチェ・ヴィータの時代に誕生し、ジャクリーン・ケネディやオードリー・ヘプバーンなどに愛されてきたそのジュエリーには島の精神と歴史が宿っています。
幸運を呼ぶカンパネッレのベルから、カプリ島の象徴であるガッロ(雄鶏)まで、各コレクションには深い物語が込められています。シャンテクレールのジュエリーを身に着けることは、単なる装飾を超えて、カプリ島の魔法と伝統を日常に取り入れることを意味します。
本物のイタリアンラグジュアリーを求める方にとって、シャンテクレールとの出会いは美しさと物語が融合した特別な体験となるでしょう。あなたの人生に寄り添うシャンテクレールのジュエリーとの出会いを楽しみにしていてください。
ぜひ一度正規販売店である銀座並木通りの時計店オールドニューでシャンテクレールの魅力に触れてみてください。その出会いが、あなたの時計人生に新たな彩りをもたらすことでしょう。