THE ART OF WATCHES
Every Watch Tells a Story. Every Story Shapes a Life. ~ 一本の時計には物語がある。そして、その物語は人生を豊かにする。
CORUM JOURNAL Vol.1
海を愛する人が、コルムに惹かれる理由。
ヨットハーバーの風景から始まる、一本の時計との出会い。

Atelier Note
初めてアドミラルを手にした日のことを、今でもはっきりと覚えている。
手の中にあったのは、間違いなく時計だった。
けれど時計を見ていたはずなのに、気づけば頭の中に浮かんでいたのは、ヨットが浮かぶマリーナだった。
木製デッキを歩く足音、頬をなでる潮風、夏の光が水面に反射する景色。
「この時計は、時間を見せるためのものではないのかもしれない。」
そう思った瞬間、なぜか海へ行きたくなった。
時計を見て、気持ちが海に向かうという経験をしたのは、後にも先にもコルムが初めてだった。
海には、街とは違う時間が流れている
海が好きな人には、不思議と似た価値観がある。
流行に流されない。人と比べない。
自分が本当に好きだと思えるものを、時間をかけて選び、長く大切にしていく。
波は毎日違う顔を見せるし、風も同じ日は一度としてない。だからこそ海を知る人は、一時の人気よりも、十年後も好きでいられるものを選ぶことを知っている。
だからだろうか。コルムというブランドにも、そういう人たちが自然と集まってくる。
“The sea never follows trends.” 海は、流行に流されない。
なぜ海と時計は切り離せないのか
古くから、船乗りにとって時計はただの道具ではなかった。
星と水平線だけを頼りに自分の位置を知る天測航海において、正確に時を刻むクロノメーターは、文字どおり乗組員の命を預かる存在だった。
陸から遠く離れた場所では、時間だけが自分と世界をつなぐ唯一の手がかりになる。そんな時代が、長く続いていた。
海洋の文化と時計づくりは、こうして深いところで結びついてきた。
昔から海と時計は、切っても切れない関係を築いてきたのである。
コルムというブランドが選んだ、独創性という航路
1955年、スイス。数多くの時計ブランドが、より高い精度を求めて技術を競い合っていた。そんな中でコルムが目指したのは、「誰よりも正確な時計」ではなかった。目指したのは、「誰にも似ていない時計」をつくることだった。
だからコルムは、創業当初から常識に挑み続けてきた。
金貨をそのまま時計に仕立てたコインウォッチ。機械そのものを大胆に見せるゴールデンブリッジ。そして、海を愛する人たちのために生まれたアドミラル。
コルムは最初から、独創性という一つの航路を選び、その航路を今も進み続けているブランドなのである。
アドミラルは、海をモチーフにした時計ではない
アドミラルの物語は、ヨットレースの熱気の中から生まれた。
特徴的な十二角形のケースは船の舵輪を思わせ、文字盤を彩る十二色は、船同士が互いの意思を伝え合うために実際に使われてきた「国際信号旗」に由来している。

これは、単なるデザイン上の工夫ではない。
海への敬意そのものを、時計というかたちに落とし込んだ結果である。
アドミラルは、海をモチーフにした時計ではない。
海を愛する人の価値観を、そのまま腕時計にしたブランドなのだ。
“Some watches tell the time. Others tell a story.” 時間を告げる時計は多い。物語を語る時計は少ない。
オールドニューインクストーリー
こんな話をしてくださったお客様がいる。
「一本目は、定番と呼ばれる時計を選びました。でも二本目は、自分が本当に好きだと思える時計を選びたかったんです。」
その方が最終的に選んだのが、アドミラルだった。人とは少し違う。けれど、見れば見るほど好きになっていく。そういう遊び心を、コルムは持っている。
また、別のお客様からはこんな言葉をいただいたこともある。
「今年の夏は、この時計を連れて行こうと思います。」
旅行の計画を立てるよりも先に、腕時計を決める。それほどまでに、旅先の景色が似合う時計なのだと思う。海辺のホテルのテラス、ヨットハーバーの夕暮れ、潮風が吹き抜けるデッキ。アドミラルは、旅の記憶までも少しだけ美しく染めてくれる時計である。
小さなお話
海を知っている人にだけ、そっと届く色
アドミラルの文字盤には、十二の色が並んでいる。はじめて見る人には、きっと明るくて楽しい配色に映るだろう。でも、ヨットやセーリングに親しんできた人がこの時計を見ると、少し違う反応をする。
一瞬、目を止めて、ふっと微笑む。
「これ、信号旗だ。」
誰かに教えられなくても、知っている人には自然と伝わってしまう。
そんな小さな仕掛けが、この時計にはそっと隠されている。声高に説明しないところも、コルムらしいやさしさなのかもしれない。
エンディング
海へ行く理由を、うまく言葉で説明できる人はそう多くない。ただ、そこへ行けば心が整う。だから、また海へ向かう。
コルムを選ぶ理由も、少し似ているのかもしれない。スペックだけでは語り尽くせない。理屈だけで選ばれるわけでもない。それでも、気づけば何度も腕に取りたくなる。そんな一本だからこそ、長く愛され続けているのだろう。
次回は、コルムというブランドがなぜ世界中の時計愛好家を魅了し続けているのか、流行ではなく個性を選ぶ、コルムというブランドの哲学を歴史を交えながらもう少し深く紐解いていきたい。




