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パルミジャーニ・フルリエ トリックとは?2024年モデル完全解説!伝統と革新が織りなす現代のエレガンス

パルミジャーニ・フルリエ トリックとは?2024年モデル完全解説!伝統と革新が織りなす現代のエレガンス

高級時計の真価は、カタログやウェブサイトだけでは測りきれません。実際に手に取り、その質感に触れ、巻き上げの感触を確かめ、手首に装着してみる—そんな体験を通じてこそ、本当の価値が分かるものです。

2024年秋、パルミジャーニ・フルリエは、ブランドの礎となったトリックコレクションの新作を発表しました。

多くの方が「トリックは知っているが、深くは知らない」とおっしゃいます。確かに、このコレクションは派手な主張を避け、控えめな佇まいを貫いてきました。

しかし、その奥深さは本物を知る人々の心を捉えて離しません。新作トリックの細部へのこだわりは、実物を目の当たりにして初めて、その真価が理解できるものです。

長く高級時計を扱ってきた経験から、新作トリックの持つ本質的な価値、各モデルの特徴についてお伝えしていきます。

高級ブランド時計のご試着・ご購入は、日本の輸入高級時計・ジュエリーシーンを50年以上牽引してきたオーナー創業のオールドニューインク銀座にお気軽にご相談ください。

トリックコレクションこそパルミジャーニ・フルリエの源流

時計の本質を追求し続けてきたパルミジャーニ・フルリエにおいて、トリックコレクションは特別な存在です。

1996年の創業時、ミシェル・パルミジャーニは時計修復師としての経験を活かし、古典的な時計製造の真髄を現代に再解釈することを目指しました。その思想を最初に具現化したのが、このトリックコレクションです。

修復師としてのキャリアで培った深い知見は、コレクションの随所に反映されています。例えば、ブレゲのサンパティーククロックなどの修復作業で完成させた文字盤製作技術は、現代のトリックにも受け継がれています。

歴史ある技法を現代に蘇らせる、パルミジャーニならではのアプローチと言えるでしょう。

建築とデザインの融合

トリックの意匠の源泉となったのは、古代ギリシャ建築のドーリア式の柱と、数学的な美を体現するトーラス(円環面)の幾何学でした。「トリック(Toric)」という名称自体に、数学的な美の追求が込められています。この名は、円環を回転させて得られる立体形状「トーラス(Torus)」に由来します。

このデザイン要素は、25年以上経った今でもコレクションのアイデンティティとして継承されています。ドーリア式建築の特徴である力強さと気品を、ベゼルのローレット加工に昇華させています。

実際、ベゼルのローレット加工を見ると、その意図がよく分かります。円を基調とした規則的なパターンは、見る角度によって光の反射が変化し、トーラスが持つ立体的な美しさを表現しています。

この意匠は、25年以上経った今でもトリックの象徴として輝き続けています。

円環面の数学的な美しさは、ケースのカーブと面取りに反映され、装着感の良さにも寄与しています。これは、美学と機能性の見事な調和と言えるでしょう。

時代を超えた価値の継承

「高級時計は装飾過多になりがち」という先入観をお持ちの方も多いかもしれません。しかし、トリックの洗練された佇まいは、そうした固定観念を覆します。

幾何学的な規則性と手仕事による温かみが絶妙なバランスで共存しているのです。

当店では、先代から受け継いだトリックを大切にされているお客様を存じています。これは、このコレクションが単なる時計以上の価値を持っている証左です。

ブランドの核心としてのトリック

興味深いのは、トリックコレクションがブランドの商業的な成功だけでなく、その哲学的な基盤も形成していることです。グイド・テレーニCEOは「ブランドの威信は初期のトリックから来ている」と明言しています。

これは、このコレクションが時計製造における最高峰の技術と芸術性の融合を体現しているからに他なりません。

特に印象的だと感じるのは、初期モデルから現代までの一貫した品質の高さです。文字盤の仕上げ、ムーブメントの精緻さ、ケースの造形美、これらすべてにおいて妥協のない製品作りが貫かれています。

それは、創業者の職人としての誇りと美意識が、確かに受け継がれている証なのです。

2024年トリックコレクションの新たな表情

店頭で日々実感するのは、上質な時計に対する見方が少しずつ変わってきているということです。かつて、ドレスウォッチといえば黒文字盤に金色のインデックスという決まりきった姿でした。

しかし今、お客様は違った味わいを求めています。そんな空気を読み取ったかのように、トリックは新しい表情を見せ始めました。

トンダPFからの流れ

2021年に登場したトンダPFは、パルミジャーニ・フルリエにとって大きな転機となりました。時計愛好家の間で特に評価が高かったのは、装飾を削ぎ落としながらも深い味わいを残した文字盤デザインでした。

毎日、様々なお客様とお話をする中で、トンダPFを選ばれる理由をよく伺います。多くの方が「主張し過ぎない上品さ」を口にされます。

意匠を必要最小限に抑えることで、かえって素材と仕上げの質の高さが際立つ——この発見は、新しいトリックの開発にも大きな影響を与えました。

例えば、従来のトリックでは文字盤にギヨシェ装飾が施され、アプライドの数字やロゴが文字盤のブロックの中に配置されていました。しかし、トンダPFの経験から、より洗練された表現方法があることが分かったのです。

新しいトリックコレクションでは、グレイン仕上げという伝統技法を用いながら、装飾は控えめに。その代わり、文字盤の素材と仕上げの質にこだわり抜きました。

特に注目すべきは、トンダPFから受け継いだケースとブレスレットの一体感です。新しいトリックでも、ケースからストラップへの移行部分に急な角度をつけず、なめらかな曲線を描いています。

これは見た目の美しさだけでなく、実際の装着感も格段に向上させました。これこそが、トンダPFから学んだ最も大切な要素かもしれません。

トンダPFは単に商業的な成功をもたらしただけでなく、パルミジャーニ・フルリエの時計づくりに新しい視点をもたらしました。その学びが、トリックという伝統あるコレクションの新たな姿を形作ったと言えるでしょう。

グレイン仕上げの文字盤が織りなす表情

新作の文字盤で目を引くのは、独特の艶消し加工の風合いを持つグレイン仕上げです。

これは、職人が酒石酸、海塩、銀を脱塩水で丁寧に調合し、手作業で仕上げていく技法です。この技法は、古い置時計の修復作業からミシェル・パルミジャーニが再発見したものです。

職人は暗がりの中で作業を行います。なぜなら、使用する銀が光に敏感に反応するためです。

面白いことに、この仕上げ工程には決定的な瞬間があります。職人が専用ブラシで文字盤を磨いていると、突然、手に抵抗を感じる時がくるそうです。

それは、銀の微細な粒子が理想的な状態で表面に定着した合図なのです。

この文字盤を初めて見たとき、その深みのある表情に目を奪われました。光を受けると、微細な粒子が織りなす陰影が浮かび上がります。

機械では出せない、人の手ならではの味わいがそこにあります。

素材とカラーの対話

プラチナモデルにはグレーセラドン(セラドングリーン)、ローズゴールドモデルにはサンドゴールドの文字盤を合わせています。このカラーリングには、建築家ル・コルビュジエのパレットが下敷きになっているとか。

ケースの輝きと文字盤の落ち着いた表情が、絶妙なバランスを保っています。

このカラーリングと素材の組み合わせは、パルミジャーニ・フルリエが目指す「現代のエレガンス」を再定義する試みと言えるでしょう。

イタリアの美意識で時計の着心地を変えるストラップ


新しいトリックで特に印象的なのは、ストラップの仕立て方です。イタリア・ナポリの高級テーラーが用いる「プント・ア・マーノ」という手縫いの技法を取り入れました。

表面には1mmの小さな縫い目と4mmの空白が交互に並び、裏面ではその逆のパターンを描きます。見た目の美しさはもちろん、手首に巻いたときの柔らかな感触も格別です。

実はこの縫製方法、時計ストラップでは前例のないものでした。パルミジャーニ・フルリエが、イタリアの職人たちと何度も試作を重ねて完成させたのです。

トリックを見ていると、パルミジャーニ・フルリエが大切にしているものが分かります。それは、時計づくりの基本を守りながら、今を生きる私たちの感覚に寄り添おうとする姿勢です。

だからこそ、多くの方々の心に響くのだと思います。私たちの店でストラップの交換を承っていますが、このオリジナルストラップの質の高さには感心させられます。

2024年トリックコレクションの卓越したムーブメント

トリックコレクションのムーブメントは時計マニアの気持ちをくすぐるすばらしいものになっています。

マニュファクチュールの誇り:PF780ムーブメント

新しいトリックの心臓部には、手巻きのPF780ムーブメントが搭載されています。厚さわずか3.15mmながら、60時間のパワーリザーブを確保する技術力には目を見張るものがあります。

とりわけ感銘を受けるのは、リューズを巻く際の感触です。ムーブメントの設計段階から、この触感にまでこだわったと聞きます。

この感覚は、一度体験すると忘れられないものになるはずです。

18金ローズゴールド製ムーブメントの贅沢

ムーブメントの素材に18金ローズゴールドを採用するメーカーは、現代の時計製造では極めて稀少です。柔らかい金の加工には高度な技術が必要とされるためです。

しかし、パルミジャーニ・フルリエはあえてその道を選びました。

ブリッジには伝統的なコート・ド・フルリエ装飾が施されています。この装飾は一見、よく見るジュネーブ・ストライプに似ていますが、サンドブラスト加工のプレートとコート・ド・フルリエ装飾のブリッジが交互に配置されています。

注目の2024年新作モデル

2024年トリックコレクションの新作モデルを紹介します。

トリック プティ・セコンド プラチナモデル

トリック プティ・セコンド プラチナモデルは、プラチナケースと18金ホワイトゴールドの文字盤を組み合わせた逸品です。

特に印象的だと感じるのは、グレーセラドンの文字盤の表情。光の角度によって見せる微妙な色調の変化は、古い青磁を思わせます。

40.6mmという現代的なケースサイズながら、厚さ8.8mmに抑えられた薄さも特筆すべき点です。

実際に試着いただければ、まずその軽やかな着け心地に驚かれるでしょう。プラチナの重量感がありながら、手首にしっくりと収まるバランスは見事としか言えません。

820万6000円という価格設定は、使用される素材と仕上げの品質を考えれば、納得できる水準でしょう。

トリックは中古市場でも高く評価されているコレクションです。特に、手作業による仕上げが施されたモデルは、発売から10年、20年を経ても価値を保っている例が少なくありません。

今回の作品も同様に、その希少性と品質の高さから、長期的な価値を期待できると考えています。

トリック プティ・セコンド ローズゴールドモデル


トリック プティ・セコンド ローズゴールドモデルは、18金ローズゴールドのケースに、サンドゴールドの文字盤を組み合わせたモデルです。温かみのある色調は、どのような装いにも自然に溶け込みます。

プラチナモデルと同じく40.6mmケースを採用していますが、ゴールドの色味が異なることで、まったく違う表情を見せるのが面白いところです。

709万5000円という価格は、18金ローズゴールドの贅沢な使用と、手作業による繊細な仕上げを考慮すると、納得な設定と言えるでしょう。

世界限定30本 トリック クロノグラフ ラトラパンテ

トリック クロノグラフ ラトラパンテこそ、パルミジャーニ・フルリエの技術力の結晶です。スプリットセコンドクロノグラフという複雑機構を搭載しながら、42.5mmという抑えめのケースサイズを実現しました。

ムーブメントには285個の部品と35個のルビーが使用され、65時間のパワーリザーブを確保しています。

個人的に魅力的だと感じるのは、シースルーバックから覗くムーブメントの姿です。アラベスク模様を思わせるスケルトン構造は、まさに機械式時計の芸術性を体現しています。

2128万5000円という価格は、限定30本という希少性と、その技術的達成度を考えれば、理解できる水準です。

まとめ

パルミジャーニ・フルリエのトリックコレクションは、1996年の誕生から四半世紀以上を経て、2024年秋に新たな姿を見せます。

伝統的な手仕事と現代の感性が調和した文字盤のグレイン仕上げ、18金ローズゴールド製ムーブメントの贅沢な輝き、イタリアの最高級テーラリング技法を採用したストラップなど、随所に卓越した品質を感じられる逸品です。

プラチナモデルとローズゴールドモデルという2つの選択肢は、それぞれが異なる魅力を持ち、着け手の個性に寄り添います。時計を見る目が肥えた方々の中で、静かな評価を集めているのも納得です。

この機会に、実際の品物に触れていただき、その真価を確かめていただければと思います。

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